ⅩⅡ.解説
a) キャンバーの揚力分布と設計揚力係数(Cli)
NACA a=0.3 のキャンバーとは、理想迎角(設計揚力係数時の迎角)において揚力の分布がx=0〜30%まで一定で、30〜100%はゼロへ向かって直線的に小さくなるように設計された、理論により求められた曲線である(右図参照)。a=0.4 であれば、揚力分布はx=40%まで一定という意味である。また設計揚力係数とは、キャンバーの前縁に対してまっすぐ気流が入って来るその翼にとって最も理想的状態の時の揚力係数(下図参照)で、この時の迎角を理想迎角と呼んでいる。実際に翼型を使用するに当たって必要となるモーメント係数(Cmc/4)及び理想迎角は、この設計揚力係数から算出できるので示しておく。
モーメント係数(Cmc/4) | 理想迎角(αi:deg ) | |
NACA a=0.3 NACA a=0.4 NACA a=0.5 |
-0.106×Cli -0.121×Cli -0.139×Cli |
3.84×Cli 3.46×Cli 3.04×Cli |
(但し、アスペクト比=∞) |
b) 翼型名と各パラメータとの関係
Bw 3−、3A翼型の呼び名は、BX−3及びBX−3Aより[A]、[B]、[C]の別を示す頭二文字を取り去ったものである。従って、Bw 3−0614とはキャンバーがNACA a=0.3、設計揚力係数が 0.7 である事を示す。c) Bw 3シリーズ翼型の特徴
Bw 3− ┬ □□□□
Bw 3A ┘ ┗┛┗┛
① ② ③
①=3−シリーズ( L.E.R. = 2.0 % )、( L.E.R. = 1.8 % )
②=[キャンバーa値]× 20
③=[Cli値]× 20
① | Bw 3シリーズ翼型は、揚力分布を前方に集中させる概念を持つ翼型である。従って、この部分をおろそかな作りにすれば、充分その性能を引き出すことはできない。 |
② | Bw 3シリーズ翼型は、共通して最大肉厚比=15%である。ラジコン模型機中、エンジン機やスロープ・グライダーにとっては多少厚翼であるが、NACA ××15に比べれば前縁半径、最大肉厚位置の前後とも肉厚は絞られているので、揚力を損なわずに抵抗の減少が期待できる。また、厚翼であるという事は軽くできる事であり、見方を変えれば同じ重さでもより強い翼を達成できる事でもある。エップラーのように抵抗は少ないが薄翼のために充分強度がとれない、といった場合にBw 3シリーズ翼を検討してみるとよい。 |
③ | Bw 3シリーズ翼は、最大肉厚がx=30%の位置にある。充分な強度を取りたいならば桁をこの位置に置くと良い。そして桁前プランクを施せば、①の理由とも相まって、この翼型にとって最も好ましい翼構造となる。 |
④ | Bw 3シリーズ翼を用いた翼後縁に舵面を設ければ、シャープな効きが予測できる。後半のぜい肉を削ったことで、後半の気流がスムーズに流れるからである。 |
d) 各翼解説
・Bw 3−0614/Bw 3A0614
偶然にもクラークYのように下面がほぼ平らになっている翼型であるが、キャンバーにより揚力分布を前方に集めたことから、桁前プランクの機体に用いれば良い性能を期待できる。後半の絞りのすっきりした万能向き翼型。・Bw 3−0620−L
先尾翼形式で先翼に用いる翼型は、揚力係数(Cl)が高いところで常用されるので、Cliの高い翼型が必要となる。キャンバーの大きい翼型は小さいClでの性能が思わしくなく、普通形式の飛行機では敬遠されがちであるが、先翼に用いる翼型は思い切ってキャンバーの大きなものを選ぶ必要がある。また、エレベータを取り付けることから舵取り付け段差によって後半部は比較的乱れた流れを予想しなければいけない。このような場合は後半部を膨らませるよりも、むしろやせていた方が都合が良いように思われる。この翼型はこのような部分にもちいると良い。・Bw 3−0814
Bw 3−0614に比べて、揚力分布の主をもう少し後方まで広げたものである。桁前プランク部分だけでなく、後方まで生かしたい、という場合に用いると良い。・Bw 3−1016
揚力分布をx=50%までフラットとし、Cliを少し引き上げた翼型。さほどキャンバーは大きくないので、中高速のサーマル・グライダーに用いると良い。・Bw 3A0414
揚力分布をより前方に集中させた翼型。二桁構造の翼に用いると良い。