空撮機設計製作日記 page 02 |
page.06-0006 内容更新日:2006.07.18. レイアウト更新日:2024.10.08. |
主要値算出
設計とは、各部の量的値と外形を決定することである。外形的なことは最初にイメージすることは必要であるが、重要なのはそのイメージに沿って各値を、順を追って決定することである。
機体で最も重要な部分は、主翼である。なぜなら主翼は、機体を空中に留めるための揚力のほとんど全てを発生する部分だからである。飛行目的に見合った飛行性能を実現する翼面を作る、これが主翼の設計となる。
尾翼は、主翼の性能を最大限に引き出すよう設計する。(実際には尾翼や胴体は、主翼の性能を上げることはない。従って「主翼の性能を最大限に引き出す」というよりは、「主翼の性能の低下を最小限に食い止める」という表現の方が正しい。)但し、尾翼は主翼のみでは実現できない大切な役割がある。「安定性」がそれである。主翼が常に一定の性能を発揮できるようその姿勢を安定させる、それを「主翼の性能低下を最小限に食い止め」ながら実現させること、それが尾翼の設計である。
胴体は、飛行の目的を達成するための器である。また胴体には、「安定」を司る尾翼を主翼に固定させるという重要な役割がある。従って胴体の設計とは、主翼が生み出す「性能」の「低下を最小限に食い止め」ながら、尾翼が「安定」を生み出すための環境と飛行目的を達成する器を実現させることである。
外形イメージは頭の中にあるので、まずは要求される数値を整理するところから始めよう。300〜1㎏程度のビデオカメラを搭載することから機体総重量は2.5〜3㎏、車に積んで運ぶことを考えて1m×1mサイズに分割、分割された翼のみの場合は1.5m以内には収めたい、また設計経験からあまり大きな機体はまだ無理だろうというところからスパンを3〜3.5m、この2つの値が最初に決定されている値である。
次に、今まで自分が製作・飛行で経験のある機体と比較させることで、いくつかの値を割り出す。
項目 |
翼 No.5 |
翼 No.9 |
翼 No.15 |
計画機要求値 |
翼面積 S(㎡) |
0.304 |
0.275 |
0.210 |
|
翼幅 b(m) |
2.00 |
2.00 |
1.20 |
3〜3.4 |
アスペクト比 A.R. |
13.2 |
14.5 |
6.9 |
9 + |
主翼重量 (㎏) |
0.195 |
0.222 |
0.167 |
|
主翼の単位面積 当たりの重量 (㎏/㎡) |
0.641 |
0.807 |
0.80 |
|
翼型 |
B.D. FH-7 / 7t |
B.D. FH-11 / 11t |
Bw 3-0614-12 / Bw 3-0616-10 |
B.D. FH-7 / 7t |
飛行重量 W(㎏) |
0.735 |
0.762 |
0.764 |
2.5〜3 |
翼面荷重 W/S(㎏/㎡) |
2.42 |
2.77 |
3.64 |
|
翼幅荷重 W/b・b(㎏/㎡) |
0.184 |
0.191 |
0.531 |
|
Cl=0.7時の 飛行速度 V[0.7](m/s) |
7.4 |
8.0 |
9.1 |
8 |
記号:
W :飛行重量
V :飛行速度
S :翼面積
Cl:揚力係数
b :翼幅(スパン)
単位:MKS( m - kg - sec )単位系
但し、重量の単位を ㎏ とする工学単位系を使用する。質量単位では
ないので、混同しないように。
(例えば、空気密度は一般的には 1.225 ㎏/㎥ であるがこれは質量
単位を 1 ㎏ とする物理単位系での値であって、工学単位系では 0.125
㎏/㎥ となる。但しこの場合の ㎏ は、質量ではなく重量の単位で
ある。物理単位系を工学単位系に変換するには、 ㎏ 単位に対して
重力加速度 9.8 で割る。なお、混同を避けるために重量の単位として
kgw [キログラム重]や力の単位として kgf [ f : force ]を用いる人も
いる。)
項目 |
要求値 → 算出値 |
要求値 → 算出値 |
||
翼面積 S(㎡) |
|
0.893 |
|
0.893 |
翼幅 b(m) |
3〜3.4 |
3.0/3.2/3.4 |
|
3.54 |
アスペクト比 A.R. |
9 + |
10.1/11.5/12.9 |
|
14.0 |
飛行重量 W(㎏) |
2.5 |
|
2.5 |
|
翼面荷重 W/S(㎏/㎡) |
|
2.8 |
|
2.8 |
翼幅荷重 W/b*b(㎏/㎡) |
|
[b=3.0] × 0.278 |
0.20 |
|
Cl=0.7時の 飛行速度 V[0.7](m/s) |
8 |
|
8 |
|
項目 |
要求値 → 算出値 |
要求値 → 算出値 |
||
翼面積 S(㎡) |
|
1.071 |
|
1.071 |
翼幅 b(m) |
|
× 3.87 |
|
3.27 |
アスペクト比 A.R. |
|
14.0 |
10 |
|
飛行重量 W(㎏) |
3.0 |
|
3.0 |
|
翼面荷重 W/S(㎏/㎡) |
|
2.8 |
|
2.8 |
翼幅荷重 W/b*b(㎏/㎡) |
0.20 |
|
|
× 0.28 |
Cl=0.7時の 飛行速度 V[0.7](m/s) |
8 |
|
8 |
|
項目 |
要求値 → 算出値→ 算出値 |
|
||
翼面積 S(㎡) |
|
1.071 |
1.071 |
|
翼幅 b(m) |
|
3.58 |
3.58 |
|
アスペクト比 A.R. |
12 |
|
|
|
飛行重量 W(㎏) |
3.0 |
|
→2.5 |
|
翼面荷重 W/S(㎏/㎡) |
|
2.8 |
2.33 |
|
翼幅荷重 W/b*b(㎏/㎡) |
|
△ 0.23 |
◎ 0.20 |
|
Cl=0.7時の 飛行速度 V[0.7](m/s) |
8 |
|
7.3 |
|
主翼主要値
記号:
bc:内翼翼幅
bo:外翼翼幅
Cr:内翼翼弦長・外翼翼根弦長
Ct:外翼翼端弦長
λ:テーパー比 (=Ct/Cr)
概略計算:
S=Cr・bc+(Cr+Ct)・bo
λ=0.75として
S=(bc+1.75・bo)・Cr
bc= 1.000、bo= 1.300、S= 1.071
∴ Cr= 0.327、Ct= 0.245
決定:
Cr= 0.330 (m)
Ct= 0.245 (m)
λ=0.75
bc= 1.000 (m)
bo= 1.300 (m)
b= 3.600 (m)
S= 1.078 (㎡)
A.R.= 12.0
(W= 3.0 の時)/(W= 2.5 の時)
W/S= 2.78 / 2.32 (㎏/㎡)
W/b2= 0.23 / 0.19 (㎏/㎡)
V[0.7]= 8.0 / 7.3 (m/s)
水平尾翼の尾翼容積の概算
安定には静的安定と動的安定がある。尾翼に関しては静的安定を示す値として尾翼容積が、動的安定を示す値として減衰係数が用いられる。そしてこれらはそれぞれ縦安定を司る水平尾翼、方向安定を司る垂直尾翼について検討が必要になる。
但しこれらの値はプロペラ機、ジェット機、グライダーで値の許容範囲が異なる。そのため、実際の静的・動的安定の良い同じ類の機体の値を参考にする。現在最も安定の良い高アスペクト比のラジコン・グライダーは主翼No.5で、それぞれの値は次の通りである。
水平尾翼容積(VH)= 0.60
縦減衰係数(VH’)= 2.00
垂直尾翼容積(VV)= 0.029
方向減衰係数(VV’)= 0.0085
また一方で、実機では概略値算出のために次のような計算式も示されている。
水平尾翼容積(VH)=k√(W/S) k= 0.02〜0.04
垂直尾翼容積(VV)=k√(W/S) k= 0.003〜0.006
W/S= 2.78 および 2.32 を代入すると、
水平尾翼容積(VH)= 0.03〜0.07
垂直尾翼容積(VV)= 0.005〜0.010
この値には疑問がある。模型飛行機にはこの計算式は通用しないようだ。主翼No.5機は特に安定が良い機体、一般的には水平尾翼容積は 0.50 程度、縦減衰係数は 1.5〜1.8 程度であると思うので、そのあたりを目標としよう。
S= 1.078
SH= 0.240
l= 0.738
c= 0.330
よって
VH= 0.50
VH’= 1.11
水平尾翼容積はまずまずであるが縦減衰係数は少々小さいのでl値を大きくとる工夫が必要かもしれない。但し、双胴双垂直尾翼形式で水平尾翼両端に垂直尾翼がつき、水平尾翼の実効アスペクト比が実際の形より大きくなるので、水平尾翼容積も縦減衰係数もこの値より多少は大き目に効くと考えられる。
参考として主翼前縁から水平尾翼後縁までを 1.000 mから 1.100 m及び 1.200 mに伸ばした場合、これらの値は次のようになる。
(→ 1.100 m) l= 0.838
VH= 0.57
VH’= 1.44
(→ 1.200 m) l= 0.938
VH= 0.63
VH’= 1.80
その他
・実際の製作にはA4プリンタを使用する。そのため、 260 mm を超えるリブ型は分割してプリントしなければならない。桁前と桁後に分ければ、桁位置を1/4弦長としてもCr= 330 mm で桁後長は 247.5 mm となり、1枚に収まる。
・主翼桁高は、使用翼型FH−7の最大肉厚が約13%であることから主翼内翼で 40 mm + 、翼端で 25 mm + である。サーボ幅は 20 mm 、エルロン用サーボはエルロン付近の主翼内に余裕で収まりそうである。