紙飛行機工作教室(詳細)

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内容更新日:2015.01.22.
レイアウト更新日:2024.10.08.

 平成27年1月13日、ある公民館で行なわれている放課後子ども教室の一環として、紙飛行機工作(「切り紙」飛行機)を実施しました。その実施内容を、主催者と写真に写っている子ども達の父兄の許可を得て公開します。紙飛行機教室実施の参考にして頂ければと思います。


 以前、子ども教室で紙飛行機作りを行なった際、先に作らせて完成したら遊び方(飛ばし方)を教えようとしたら子ども達の完成するタイミングが思いのほかバラバラで、全員そろった時には先に出来上がって上手く飛ばせない子が飽きてしまっていた。その反省を踏まえて、早く完成しても自分なりに工夫しながら飛ばせるように、今回は工作に入る前に飛ばし方の指導を行なった。

 なお、低学年の子には「切り紙」飛行機ではなく「折り紙」飛行機を作らせる案もあったが、主催者側の希望もあって全員「切り紙」飛行機(カッター使用)に挑戦することになった。全員と言っても過疎化のためこの地区の子どもの数は少なく、小3が2名、小1、5、6が各1名である。教室の時間は2時間。各家庭の事情もあって、途中参加2名、途中退出2名。大人は主催者・サポーター・講師の私の3人。

 型紙は私が独自に開発したもので作りやすいものを7~8種類用意、各々完成サンプル(飛行調整済み)を展示して、工作意欲を上げるために開講前の時間子ども達に自由に飛ばさせた。

【導入】
 工作をするために来た子ども達にいきなり「座学」は抵抗があると思ったので、子ども達の注意を話にむけるためにまず次のような話をした。(以下、左列の画像を順次板に貼りながら話を進めた。)
「みんな、好きな食べ物は何かな?」
<失敗:調理を想定した質問だったが、「好きな食べ物」の問いに対して「メロン」「スイカ」という返事が返ってきた。「好きな給食」を問うべきだった。やむを得ず「メロン」で話を進める。>
「うちでメロン作ってる人はいるかな?」
「いない。じゃあ、みんな、お店で買って来なきゃならないね。(低学年の子に)買って来れるかな?」→①

「さて、メロンは買って来た。そのまますぐ食べれるかな?」
「包丁で切らなきゃならないね。」→②

「最後に、美味しく食べる。」
「でも、もし美味しくなかったら、メロン好きになれるかな?」→③

この3つが揃わないと、1つ欠けてもメロンを「楽しむ」ことはできないね。この事を、紙飛行機について考えてみよう。
まず、飛行機の形を決めなきゃならない。これはみんなにはできないので、私が決めてある。ここの部分はみんなは考えなくていい。
これを今日、みんながやる。
形はできあがっても、上手く飛ばせなかったら、やっぱり「面白くない」。
紙飛行機を楽しむためにも、やっぱりこの3つが揃わないと楽しむことができないんだ。

そこで作る前に、飛ばし方の勉強をしておこう。
飛ばし方と言っても、出来上がってから飛行機のねじれを直すこと(調整)と、投げ方の2つがあるぞ。
【飛ばし方指導】(1)投げ方
飛行機は、まず、真っ直ぐ飛ばせないといけないよ。
3方向から見て、いずれも「真っ直ぐ」に投げ出さなければいけない。

(真っ直ぐでない飛ばし方と真っ直ぐな飛ばし方の両方を実演してみせる。その後、子ども達に実際に飛ばさせて一人一人にコツを教える。座ったままでは子ども達も飽きてくるので、それを防ぐ意味もあった。)
【飛ばし方指導】(2)調整
 子ども達にとって一番難しい部分であるが、これをあらかじめ教えておくのがこの「座学」の最大の目的。
一番むずかしい「調整」の話をする。
ここで、真っ直ぐ飛ぶように調整された3機を用意し、1機は胴体を、1機は主翼をわざとひねって各々どのような飛び方をするか実演。
(主翼アスペクト比{=翼の縦横の比。横に長いと大きくなる。}の大きい機体を準備したのは、その方がよりシビアな調整を体験できると思ったから。)
胴体をひねった機体を子ども達に見せ、ねじれていないか確認をさせる。
真後ろから見てもねじれを見つけられない子もいたが、ほんのわずかねじれても真っ直ぐ飛ばなくなる事を知って、見る目がだんだん真剣になっていくのが感じられた。
このねじれを直すのは慣れた人でも難かしいが、子ども達が試行錯誤でいろいろ試してくれる事を期待した。
多くの人はこう考えていると思うが、本当だろうか?
(ここからは飛行機の「縦安定」の話になる。)
(時間がなかったので、先に答えを示した。)
3つの図の矢印、どこが違うかな?

矢印の向きはすぐ分かった。もう一つあるぞ。

矢印の長さが違う。実はこれは、スピードが違うんだ。
真っ直ぐ飛ばそうとすると、しっぽを跳ね上げるとゆっくり下の方へ降りていくようになり、しっぽを押し下げると遠くへ速く飛ぶようになる。(デモ機で実演。)
そして、真っ直ぐ飛ぶ速さより速く投げると上へ行ってしまい、遅く投げると下へ落ちてしまうんだ。
ちょっとむずかしいかな?
自分のが出来上がったら、いろいろ試して下さい。

(「縦安定」は難しいところであるが、ここの説明にこだわると子ども達は飽きる。話だけでは分かるはずもないからさっさと通り過ぎて、自分の機体を投げてみて上手くいかなかった時に「何故?」と振り返ってくれれば良い。)
【作り方指導】
最後に、作る時の注意。
(型紙シートの線を簡単に説明。私の設計した型紙は、作る人が考えながら作るように懇切丁寧な説明はつけていない。「これはどこにくっつけるんだ?」とサンプルをいじくり回しながら作らせる事を目標としている。)
(折り目をつける時のカッターの使い方の説明と、カッターを使い慣れていないと刃を斜めにして切っている場合が多いことに対する注意。)

 説明(約30分)終了後、すぐ工作に入った。道具はカッター(小)、カット台、金属製カット定規(小)、セメダイン(シンナー系=水性接着剤では紙が歪んで直せないため)を各自に配布。機種は、サンプルを見て作りたいものを選ばせた。工作における問題点と効果を挙げてみる。
・低学年にはカッターは難しく、準備していたハサミを与えてみたところ曲線も比較的きれいに切れていたので、ハサミできれるところはハサミを使わせ、細かいところにカッターを使わせた。

・低学年はカットに時間がかかり、早退予定の子は完成に間に合わないと判断して大人の応援をお願いし、間に合わせることができた。もう少し工作の簡素化が必要と感じた。(型紙の設計は私が行なっているので、新たに機体を設計しなければならない。)

・低学年は椅子に座った時に、相対的にテーブルが高い。そのせいもあって、カッターはどうしても”鉛筆持ち”になり、刃が斜めになってしまう。

・低学年への応援で、高学年に対するサポートがどうしても手薄になってしまう。

・高学年に於いてもカッター使いはまだまだ不慣れで、手先の器用さを育てるためにはカッター工作は定期的に継続すべきだと思う。

・ふざける子はおらず、皆真剣に工作に取り組んでいた。低学年はカッターで怪我をしないか心配だったが、その危険は感じられなかった。(子ども達の注意力は切れなかった。)大人達の暖かい応援があった事も影響していると思う。(大人数の公民館での紙飛行機工作の要求はあったが、サポーター1人に対して子ども10人では目が行き届かないため実施には至っていない。放課後子ども教室は市内各公民館で異なる曜日で行なわれているから、他地区のサポーターの応援を得られる仕組みを作ればどこの公民館でも実施できると思う。)

・紙飛行機としての工作完成度は、カットの正確さ、折り目の処理、接着の確実性など、まだまだだと思う。中には部品の付け場所を間違えて重心が狂ってしまっていると思われるような機体もあった。(重心が狂うと、飛行機は全く飛ばない。)

・高学年2人は前回の紙飛行機工作にも参加していて、あの時上手く作れなかったからと同じ機種を選んでいた。しかし、前回はオリジナル(B5版)をA4に拡大した型紙を使用したが今回はB5の型紙だったため、作り辛く飛ばしにくかったと思う。(飛行機は、小さいほど風にあおられ易く調整もシビアである。製作精度も相対的に下がる。)

 全員完成後、時間は短かったが長テーブルを滑走路に見立てて「着陸ゲーム」と、パイプ椅子の背もたれを潜るゲームを行なった。終了時の挨拶では、何だか工作の時間というより理科の時間みたいだったけど、ホントは紙飛行機は「理科」なんだよ、という話をした。将来みんなの中から飛行機の世界に入る人が出るといいね、なんて話が出て、この日の工作時間は終了となった。


 教室終了後大人で飛ばしたりしていたが、上手く飛ばせないけれど意欲満々の人もいて、大人向けの紙飛行機教室もあっていいのではないかと思う。特に子ども教室でサポートする人は、たかが紙飛行機でもある程度の知識が必要である。子ども教室のサポーター向けの「紙飛行機を子ども達に楽しませるための飛行機講座」、なんてのがあると面白い。指先を使い、物を考える「紙飛行機工作」は、今日本でも社会問題になってる老人の認知症防止のためにもいいのではないだろうか。