雑学ノート(量子力学)
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page. 21-0005 公開開始日:2021.11.11. 内容更新日:2022.07.08. レイアウト更新日:2024.10.08. |
量子(ミクロ)の世界では、物質(電子、陽子、光子など)の状態は観測によって決まるのであって、観測をしていない時はどのような状態にあるかはわからない(あらゆる状態にある)のだという。それを不満としたアインシュタインは「月は見ていなくてもそこに有る」と言い、シュレーディンガーは「シュレーディンガーの猫」のパラドックスで量子力学の問題点を指摘した。
しかし、「シュレーディンガーの猫」については自分もその通りだと思うが、月の件については自分は心配に及ばないと考えている。理由は、量子スケールの現象は人間のスケールでは全く通用しないからだ。その根拠を考えてみた。
ウォルター・ルーウィン教授の講義で、ハイゼンベルクの不確定性原理について次のような計算を行なった。
公式 ⊿Px × ⊿x ≧ h/4π (運動量P = 質量M × 運動速度v; h:プランク定数=6.63×10-34 J・sec)
において h/4π = 1 と仮定して、質量1kgのビリヤード・ボールを30cm四方のラックに入れた時のボールの運動速度を計算してみる。 ⊿x = 0.3m、 M = 1kg を代入すれば、
v ≒ 3m/秒
すなわちビリヤード・ボールは、ラックに入れられたとたん、およそ3m/秒のとても不確定な速度で動き出す。狭い範囲に閉じ込められた物体が運動を起こすこの現象は「零点振動」と呼ばれ、電子が原子の中で静止しないのと同じ理屈である。
では、 h/4π を正しい値、5×10-35(J・sec)を使って再度計算をしてみる。結果は、
ビリヤード・ボールは、100億年かけて陽子の20分の1だけ動く。
このように、量子力学は我々のスケールでは何の効果も発揮しない。そして月に至っては、ビリヤード・ボールよりはるかに大きく、ラックよりはるかに巨大な半径1億5千万kmの軌道に閉じ込められているわけだから、おそらく数兆年かけても陽子の数兆分の1も動かないだろう。言い換えると、月は見ていない時、陽子の数兆分の1の範囲の中で「どこにあるかわからない」。
ちなみに質量1×10の-30乗kgの電子が原子サイズ1×10の-10乗mの範囲に閉じ込められた場合、電子は秒速500kmで動くことになる。光の速さ秒速30万kmには遠く及ばないが、このスピードで1×10の-10乗mの範囲内を回るとなると、どれだけ回ることになるのだろうか。それこそ1×10の-10乗mの範囲の「どこにあるかわからない」のではあるまいか。