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内容更新日:2003.12.01.
レイアウト更新日:2024.10.08.


 個人的な意見 part-2

[5] ボールを足で蹴るプレーについて
    (思いやりのあるプレーという事)
 バレーボールの雰囲気を大きく変えてしまったルール変更の一つに、下肢にボールが当たってもグッドになった事が上げられると思います。人間の体のどこからが下肢なのか判別できない以上当然のルール改正ではありますが、改正直後からボールを平気で蹴る選手が増え、今では大半の選手が足でボールを蹴り上げます。私達の頃はバレーボールを足で蹴ったら、血を見る大喧嘩になったものでした。それ程、自分達の使うボールに愛着があったのです。3,4年前でしたか、ある体育館で一人のバレーボールの指導者が(彼はバスケットボールも好きでやってきた人のようです)隣のコートで遊びに来ていた子供達がバスケットボールを蹴るのを見て怒りつけていました。我々の世代(?)の感覚としては当然の事ですし、そういう形で子供達を”導く”事も必要と思って見ていました。ただ、ボールを蹴らない事を強要したからといって「愛着」観念が沸くわけでもなく、日頃からボールを大事にする何らかの雰囲気があった上で「蹴らない」という約束ができるわけで(叱るだけでは指導にはならない)、安易に”禁止”したところで本質は改善できないのではないかと、思いあぐねていたところです。

 ここ数年、ある所でママさんバレーのお相手をしているのですが、本当のママさんは2〜3人しかいないのでパパさんや若い人達も集まって皆でワイワイと楽しんでおります。レクリェーションの場ですから、クラブチームのようにプレーに対して責任が問われるようなことはありません。ただ一つ、問題に感じているのは「足でボールを蹴る」事です。素人だからしょうがない、でも、いわゆる”できる”人達も率先して蹴っている、何かが違うんじゃないか、ずっと思い続けてきました。次代を担う中学バレーの選手も親に連れられて来ていますから、教育的な観点からも疑問を持っておりました。
 ところが最近、蹴ったボールが一緒にプレーをしている仲間を襲う場面が多くなってきたのを見て、一つの答を見つけたのです。『何故、足でボールを蹴ってはいけないのか』。それは、『次の人がプレーする事を考えていないからだ』。蹴った本人は格好いいプレーで得意満面かもしれないが、蹴ったボールは手ではじいたボールよりもはるかに強く、次の人にとって危険であると同時にプレーをしにくくする。レベルの高いバレーをやっている場合であればたとえば、レシーブをはじいて次の人がカバーとして2段トスをする、この時その選手にとっては「アタッカーが思いきって打てるトスを上げる」事が仕事になるわけで、いいトスを上げてもらうためには同じレシーブ・ミスでも少しでもやわらかいボールにして繋いでもらうべきではないだろうか。足でボールを上げるというのは、次の人の事を考えない身勝手なプレーとは言えないだろうか。

 同じような事が、この地区の6人制のフォーメーションにも言えそうです。この地区では小・中・高・一般のほとんどのチームが3−1−2フォーメーションをとっています。3−1−2フォーメーションは別に珍しいものではありませんが、中央の選手は前へ動きながらフェイント専門に拾うのが一般的です。ところがこのあたりのバレーでは、中央にいる選手が後へ動きながら強打もフェイントもほとんどのボールに手を出して拾おうとします。そのために後の二人は目の前のボールを取られてしまう形となり、瞬間的に動けなくなる上に「仕事」を奪われてレシーブ意欲もなくして棒立ちになり、全体として「動き」の乏しいバレーになってしまいます。実際、後のレシーバーになってみると、目の前で手を出されて邪魔で仕方ありません。6人制はコート中央は空けるのだと言っても、ほとんどの指導者は聞く耳持たないというのが現状です。今までこの地区でこのフォーメーションで勝ってきた、そんなところなのでしょう。
 『なぜコート中央は空けるのか』、後のレシーバーの邪魔をしない事のほかに得た答はやはり『次の人がプレーする事を考える』という事。実際にこの地区のフォーメーションの中でプレーしていると、中央の選手がレシーブ・ミスでボールをはじくと、ほとんどの場合、誰もカバーできません。だから一番レシーブの上手な選手を中央に置くのだと言うのかもしれないが、一人の選手だけが上手さを振りまいてカバーをアテにしない、それがバレーボールと言えるだろうか。中央を空けて皆が丸く囲んで「向かい合って」いれば、もし誰かがミスっても誰かがカバーできるんだよ。
 バレーボールでは、一人のプレーヤーの瞬間的な動作が他のプレーヤーの動き出し、即ちプレーの成否に大きな影響を与えます。「お互いに動きやすいように、働きやすいように、カバーし会えるように、」そういう動きをコートの中で覚える必要があります。結局バレーボールの練習とは、その繰り返しではないでしょうか。

 最近の日本の底辺層のバレーは、ひたすら上を目指して自分自身の技量向上ばかりに目が向いてしまって、自分達に対して思いやりあるプレーという事が忘れられているような気がします。上位クラスのバレーを見ていても、ボールを蹴ったりガムを噛みながらプレーしたりと欧米の真似ばかりで、日本人として本来持ち合わせている良いもの、世界に誇れる良いものが見捨てられてしまってはいないでしょうか。一人一人が抜きん出ていなくても皆で頑張るんだ、そんな「日本人にしかできないバレー」があったはずだし、今もあるはずなのです。何故なら、今だって我々は日本人なのですから。でもそれはトップ・クラスになってから考える事ではなく、底辺層の段階から教育されるべき事だと思うのです。きょう日、身勝手なプレーが多過ぎます。

 なお、横浜方面で「足で蹴ると反則」というルールで「マイレボ杯」なる独自の大会を開いているグループがあります。私も一度、練習に参加させていただきました。ある程度やってきた人達のようでしたが、真面目で感じの良いバレーをやっていましたよ。

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