21 漁業補償


文は正しいですか

  漁業権について、ダム事業によって河川のダム堤体部分の漁場を失うことや、ダム堤体によって河川が遮断されることにより魚の交流ができなくなる等環境の変化が漁業権に悪影響を与える場合の補償は、「権利の制限に係わる補償」を行う。

説明

・答えを先にすると間違い文でして、ダムサイト敷は「消滅補償」で環境の変化が「制限補償」となります。

・漁業補償に関係する補償基準の条項は事業損失を別として五つからなっています、探ってみます。

(一)漁業権の消滅に係わる補償(基準第二〇条)
・コンクリートや骨材によって固められる堤体部分は漁業活動等漁業権の行使が一切できない区域となり消滅補償の対象となります。
 海域でも港湾事業での岸壁や防波堤のような施設、臨海工業での埋め立て地などの区域も同様です。
・補償額は、借地権等の一般的権利は取引価格ですがこの権利は漁獲高から経費を引いた純収益を資本還元した額です。

(二)権利の制限に係わる補償(基準第二七条)
・ダム堤体によって河川は上流と下流に分断されます。環境の変化としては、魚道を設置するとはいえアヤなどの遡上、交流は不可能としたものでしょう。また上流貯水池は権利の設定はできると思いますが、従前と違い水深が大きく流速のない状態となり、生態系は一変します。これらの変化、価値がどう変わるかが補償となります。一河川には河口まで沢山の漁協かありますがどこまで影響があるかというのも問題です。
・工事期間中一時的ですが、流れの位置を変えたり、工事用道路や事業用途として使用し漁業活動が出来ない状態としますが、これも一時的制限の補償でしょう。
 港湾でも構造物の設置によって周辺の漁獲に影響があった場合や就航による変化も補償対象のようです。
・補償額は制限を与える期間等を考慮しながら、専門家の判断を参考にし被害率(減収割合)を想定、消滅に係わる補償額に乗じて求めます。

(三)漁業廃止、漁業休止、漁業規模縮少の補償(基準第五〇条、五一条、五二条)
・この三つの条項は漁業権の消滅や制限の補償に伴い通常生ずる損失の補償ですが、考え方は営業補償や農業補償のそれと同じでしょう。
・廃止という例は少ないでしょうが、防波堤などで海浜がなくなり地曳き網漁業が出来ないといった場合があります。
 補償額は船体等漁具の売却損や転業経費として四年分の収益等となります。
・休止も一部漁場の減少では考えにくいが、必要とする場合はその期間の固定的経費と収益減となります。
・規模縮少は漁場の消滅や制限によって当然生じるように思えます。補償額は余剰となる漁具の売却損と縮小分の収益が対象となります。
・この補償は漁協組合員数の累計額となる。

(四)事業損失
・汚濁水の漏水、潮流の変化、温度変化等が影響を与えると予測される場合は、事業損失として対処することになります。ダム事業で汚濁水による損失を制限の補償の被害率に組み込み算定した例があるかもしれません。

(五)その他
・漁業権補償の権利主体(誰と交渉し誰に払う)は組合かそれとも組合員かという争いがありました。平成元年七月一三日、最高裁は共同漁業権の権利主体は組合側にあると断じました。
・平成二〇年妥結したという福島第一原発増設における漁業補償は百二十億、一世帯数千万と云われます。建設は中止になりましたが、着手していますから補償金はそのままでしょう。参考として計算内訳を知りたいのですが不明です。