Ⅰ.球の抵抗に関する基礎知識
球の受ける空気抵抗については、次のような事が知られている。
バレーボール程度の大きさの球においては、遅い速度では速度の2乗に比例して空気抵抗は大きくなっていくが、ある速度を越えると急に抵抗が減り、再び速度の増大と共に空気抵抗も増加する。この急に抵抗が減る速度を仮に「臨界速度」と名付けるとしよう。
もし、球にわずかなデコボコがついていると、臨界速度は低くなる。ゴルフボールには小さなくぼみがたくさんついているが、このようなデコボコがあった方がかえって、より遠くまで飛ばすことができる。
なぜこのように空気抵抗が急に小さくなるかというと、次のような説明がなされている。
臨界速度以下の速度では、ボールに沿う流れは早くに剥がれてしまい、後方の乱れの範囲が大きいので空気抵抗も大きい。ところが、ボールに沿う極めて薄い層の内部の流れの変化から、ある速度を越えると急にボールにべったりくっついて流れるようになり、剥がれ点もボールの後方まで移動するので、後方の乱れの範囲が小さくなり、空気抵抗が突然減少する。 |
なお、過去の研究者達による研究は、臨界速度前後に抵抗の不安定な現象がある事を報告してはいるものの、野球のフォークボールやバレーボールの変化球サーブのように不安定現象を逆に利用するという考え方がないので、不安定現象について詳しく報告された例は見当たらない。