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内容更新日:2002.10.18.
レイアウト更新日:2024.10.08.


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Ⅷ.検討内容
[1]肉厚曲線(最大肉厚前後の絞り)
 外形を[図.1]に、全体の曲率(1/曲率半径)を[図.2]に示す。BX−3[A]タイプにおいて、NACA 0015に対して明らかに前縁半径は小さくなり、前半・後半共にぜい肉の取れた形となっている。最大肉厚位置を後方へずらすと、前半はやせてくるが後半は太ってしまい、[C]タイプではNACA 0015よりもふくらんでしまっている。キャンバーにのせた時の形も、あまり良くない。(左図)後半の絞りを工夫する必要がある。BX−3とBX−3Aでは、左図程度の大きさではほとんど見分けがつかない。以上の事から、実用できるのは[A]タイプのみと判断する。
[2]前縁形状
①前縁半径の大きさの確認:
 対称翼における前縁付近の曲率半径を[図.3]に示す。肉厚曲線を見る限りにおいては、前縁半径は要求通りの大きさになっている。(曲率半径の計算による前縁半径が多少ずれているのは、三点円弧法により半径を求めているためである。)BX−3とBX−3Aの差も、x=0(前縁)においてははっきり出ているが、x=0より少し後方へ目を向けた時に、BX−3Aは前縁半径の影響でもう少し後方まで絞られていいはずである。
②前縁付近の形状:
 キャンバーにのせた時の前縁付近の形状の拡大と、その曲率半径を、各々[図.4]、[図.5]に示す。[図.4]においては、BX−3とBX−3Aの比較がなされているが、BX−3Aの方が前縁半径の影響を受けてやせているのがわかる。但し、この2つのラインはx=20%位のところで重なってしまうので、層流翼的な絞りではない。また、キャンバー・ラインの先端が理論上の前縁となるのであるが、曲率半径の一番小さな所がそれよりも少し前にあるように見受けられる。この事は[図.5]においても確認できる。これは、キャンバー曲線がx=0で傾き(y’)=∞となる事に起因しており、x=0において真下を向いたキャンバーに肉厚がかぶせられてスタートするので、局部的に無理な形となってしまうためである。従って、x=0において2%だった前縁半径も、キャンバーを持たせる事により実際はもっと小さな半径を持つ事になる。[図.5]には、この事による前縁の局部的な不整が現れている。lnx(対数)項を用いたNACA a=〜系統のキャンバーの一つの欠点でもある。しかし、現実に翼型を使用する場面においてはこのような狭い範囲の不整は製作段階で解決されてしまうので、問題とはならない。これを「まるめ」と称すれば、[図.5]では「まるめ」によって不整が解決されるであろう事を示している。これにより前縁半径も要求通りの値となる事がわかる。(注:三点円弧法を用いたB.A.R.独自に開発された方法を用いれば、「まるめ」<条件:ポイント・ステップ=2、両サイド5点平均>付きで算出した前縁半径値は、%表示で小数点以下第1位まで信頼できる。)
[3]曲率の不整
 [図.6]に、Bw 3−0614及びその肉厚曲線(Bw 3−0000)とキャンバー曲線(NACA a=0.3 )の曲率(1/曲率半径)グラフを示す。Bw 3−0614には、x=30%位置に鋭い変曲点のある事が認められる。従って、つなぎ目のないキャンバー曲線を用いたにもかかわらずⅠ(5) の解決にはならなかった事が判明した。その原因がキャンバー曲線にある事は、グラフにより明白である。キャンバー公式に ln│a−x│項を含む事が原因。特に翼上面にこのような曲率の不整があると、その周囲の気流の流れに無理がかかり、大迎角時に悪影響が予想される(文献.2)。但し、模型飛行機のようなレイノルズ数の小さい状態においては、翼型前半の不整がかえって失速を遅らせる場合もあるので、一概に悪いとは言えまい。ラジコン機の場合、プランクの切れ目の段差と前後させて、プランク段差の前方に曲率不整点を置く事で段差を乱流境界層中に埋もれさせる、あるいは曲率不整点の方を後方にする事で、それを外皮の凹みの中に埋没させてしまう事で解決を図れば良い。同じ不整なら1ヵ所にまとめてしまえ、というのでは悪影響を助長させるようなもので、あまり感心しない。
[4]失速性の問題
 曲率(y”)のグラフを[図.7]に示す。失速性に特に問題はないと判断する。y”法による失速性の検討は(文献.2)に提唱された方法で、判別三角形を用いて翼型が急激な失速をするか否かを判別するものである。[図.7]ではBw 3−0614のグラフが示されているが、設計揚力係数(Cli)がこれより大きな翼型であれば間違いなく曲線は判別三角形の上方を通ることから、Cliが0.7以上のBw 3−、3A翼型は緩やかな失速性を期待できる。また、文献によればy”グラフによって曲率の不整が発見でき、前縁付近はy”が∞に近くなる事からx√xを乗じて検討すればよいとなっている。しかしx1.5 を乗ずるとあまり重要ではない後半の不整が大きく拡大されてしまうので、視覚判断上よくない事から[図.7]のグラフではx1.4 を乗じた上で後半をカットした。x=30%位置の不整は[図.6]で原因がはっきりしているので省略する。

Ⅸ.文献
1. Abbott, Ira H., and von Doenhoff, Albert E.:"Theory of Wing Sections." Dover Publications, Inc., New York, 1959.
2. 内藤子生:"飛行力学の実際." 日本航空整備協会,1978.