[序文]
中学生を指導している他の指導者の指導を見ていて、それは違うのではという疑問を
持ったことから、自分自身の今後の訓練の内容と重ね合わせて作ったものである。文中、
「高い姿勢」「低い姿勢」とあるが、「高い姿勢」とは俗に言う「棒立ち」ではなく、つまり
上体の高低ではなく腰の高低を指している。姿勢は高くても低くても目の高さは同じと
考えれば、「高い姿勢」とは上体を前のめりにねかせて脚を適度に伸ばして最も俊敏に
移動できる姿勢であり、「低い姿勢」とは、オーバーパスやアンダーパスで位置取りを
完結させた後にパス動作をより正しく行うために上体を起こし、脚を充分落とした姿勢を
言う。この「高い姿勢」「低い姿勢」という言葉は、もうずい分前になるが、日立女子の
山田重雄監督がソ連男子のプラタノフ監督を招いて開いた講習会の放送でプラタノフ
監督が使われた言葉であるが、自分はそれに「中間の姿勢」を加えてこのマニュアルを
作成した。
たとえばコートの中を移動してパスを送るような練習でも、ボールを出す前に上体も低く
腰もすっかり落として、とにかく低いポーズをとらせる指導者もおられる。より丁寧に見せ
ようとする意図はわかるが、腰まで落としてしまっては敏捷性を失うことになると共に、
ボールが出てそれを追いかける段階で棒立ちになりやすく、またそれを見逃している
場合が多い。棒立ちで走るから、ボールの下に入っても腰を充分に落とせなくなる。
そういった実情を見て、構えも「待ち」の構えと「受け」の構えを区別してはと考えた。
[本文] 1997年12月18日作成
パス動作において、構えの姿勢には次の3通りがある。
1.高い姿勢 = 前後左右に敏速に動けるよう、腰を高めに、上体を低くした姿勢
2.低い姿勢 = 確実にボールをとらえて送り出すよう、腰を低くし、上体は起こして
腰の上に自然に乗っている姿勢
3.中間の姿勢= 高い姿勢と低い姿勢の中間の姿勢。腰も中間、上体も中間の姿勢
となる
一方、「パス動作(いろいろな質のボールを受け、相手にボールを送り届ける動作)」には
Ⅰ.パス(オーバーハンド、アンダーハンドの、いわゆる「パス」)
Ⅱ.サーブ・レシーブ
Ⅲ.アタック・レシーブ
の3種類があり、更にそれぞれについて
a.ボールが相手の手を離れる前にとる「待機」の姿勢
b.ボールを受け取る直前にとる「受け」の姿勢
の2通りがあって、これらそれぞれ必要に応じた構えの姿勢をとることになる。
a.待機の姿勢 | → | b.受けの姿勢 | |
Ⅰ.パス | 高い姿勢 | → | 低い姿勢 |
Ⅱ.サーブ・レシーブ | 高い姿勢 | → | 中間の姿勢 |
Ⅲ.アタック・レシーブ | 中間の姿勢 | → | 中間の姿勢 |
なお、練習中は待機の姿勢がどうしてもあまくなるので、正しい姿勢を身につけさせるために
指導者は充分注意する必要がある。
次に、それぞれの場合になぜその姿勢が必要となるかを説明する。
Ⅰ.パス
a.待機 = 高い姿勢
ボールが相手の手を離れた瞬間、すみやかにボールの落下点に
移動しなければならない。ボールを受けるまでには時間的に余裕が
あるので、受ける事よりも最も機敏に動ける事を目的とした体勢を
とる。
b.受け = 低い姿勢
ボールの速度は遅く、ボールをキャッチするのに充分ねらいが
つけられる事、ボールはほとんど変化を起こさない事から、ボールを
送り出すための充分な体勢を作る。
Ⅱ.サーブ・レシーブ
a.待機 = 高い姿勢
パスの待機同様、すみやかにボールの正面に入らなければならない
のでこの姿勢をとる。しかし、パスの時よりも時間的には余裕がない。
b.受け = 中間の姿勢
ボールはパスの場合よりも速く、しっかも変化をするので低い姿勢
では対応が困難となる。腰を浮かせ、ヒザを左右に少し開いて変化に
対応できる姿勢をとる。
Ⅲ.アタック・レシーブ
a.待機 = 中間の姿勢
b.受け = 中間の姿勢
ボールが速いので姿勢を変える余裕はない。腰を高くすると前方の
低いボールがひろえず、かといって腰を落として上体を起こすと受けた
ボールが後方へ飛んで行ってしまうので、最初から中間の姿勢で
構える。なおこれは基本姿勢であって、たとえば前方の低いボールと
読んで上げようとする場合は腰も上体も低く構え、あるいは
バックセンターが後方を広く守る場合は、どちらかというと高めの姿勢
をとる。ネットぎわの場合は、低い姿勢の方がよい。
(ボールは上から来る。)
なお、アタック・レシーブ、サーブ・レシーブにおいては特に、ボールを受ける瞬間、肩の力を
抜くようにするとよい。(ボールの当たる部分には力を入れ、肩の力を抜くのであるから、
熟練を要する。)